インコのためのSoak方法

How to Prepare Soaked Seeds and Nuts for Parrots.

Soakとはソークと読みます。種子(シード/豆類/ナッツ)を水に浸してふやかしたもののことです。Sprout(発芽)させるために必ず必要となる工程です。

植物が「生命活動を開始する前段階」であり、この段階だけでも栄養学的に多くの変化が起こります。
乾燥したままの種子に比べ、水に浸すことで柔らかくなり、鳥が食べやすくなります。水に浸すことで種子に含まれる栄養素が体に吸収されやすくもなります。
つまり、消化しやすくなり、栄養を効率よく取り込める状態になるので、鳥の健康に良くヒナや病気の鳥、老鳥に与えることも推奨されています。

当ページは、当店で販売中のSoak Seedsミックスナッツを前提にした作り方です。

なぜSoakがオススメなの?

・抗栄養素が減少するので消化が良くなる
・胃腸への負担が減るので、胃が弱い動物にも適している
・水分を含んでいるので消化が良い
・栄養の吸収率が高いとされている
・体内の水分を奪わないため、腎臓・肝臓への負担が減る
・ミネラル吸収率が上がる
・食いつき(嗜好性)が向上することが多い
・消化管の流れがスムーズになる
・柔らかいので嘴が小さい鳥にも適している
・ヒナに与えることで免疫力の高い体作りができる
・老鳥は少ない食事量で栄養価が高い食事を摂れる
・水分を含んでいるので体内の水分を奪わないので負担が少ない
・ナッツの場合は、ナッツの油が酸化してしまうのを防ぎ、より安全で消化しやすい状態にしてくれる。

など。
Soakだけでも、乾燥シード/乾燥ナッツとは全く別物の健康食になります。他にも様々なメリットはありますが、多すぎるので割愛します。

栄養面以外で挙げると、鳥の食事として非常に適しているからという理由です。
実は野生の鳥は完全に乾燥した種子などを食べる機会は少ないことをご存知でしょうか(参照)野生の多くの鳥が食べているのは、雨や朝露などで水分を含んだものが多いのです。地面に落ちている湿った種子(Soakに似た状態)や発芽してすぐの種子(Sprout状態)や土の中を掘り起こして見つける水分を含んだ根です。
普段、飼育の時に与えているような完全に乾燥している種子を摂取する機会は多くありません。種子以外の野菜、フルーツ、花、葉、ナッツ、昆虫も同様で食べられるものは何でも食べますが多くの場合、水分を含んでいる生の状態を食べています。
まだ愛玩動物になってから歴史が浅く家畜化されていないので、体の作りが野生と変わらない飼い鳥にも、同じような食事をさせてあげることを強く推奨します。(参照
※家畜化とはペットになってからの歴史ではなく、交配や遺伝子などに関わることです。参照に詳細があります。

抗栄養素について

Soakで最も注目すべき点は抗栄養素の減少が注目ポイントです。
※Soak状態では酵素はほとんど期待できません。

抗栄養素とは、フィチン酸が有名です。簡単に言うと、自分の身を守るために持っている“バリア”のことで、栄養の吸収を阻害する働きがあります。

抗栄養素自体は悪いものではありませんが、この抗栄養素があるとカルシウムや鉄分などいくつかの栄養の吸収率を低下させてしまいます。鳥の胃袋は小さいので、せっかく与えるならば吸収率の高い状態で与えたほうが、栄養価の高い状態で満腹になるので健康的です。

そこで適切な時間をSoakしてあげることで抗栄養素を取り除くことができます。全て取り除くことはできませんが大幅に減少させられるという意味です。

多くの研究ではSoakすると、フィチン酸(抗栄養素)は20~60%ほど減るというデータがあります。Sproutのほうが、Soakよりも抗栄養素は減少しますが、手軽に作れるSoakでも十分に減少させられます。

乾燥種子とSoak種子、それぞれ同じ量を与えてもSoakしたほうが体内での吸収率が大幅に違うのであれば、より栄養価の高い健康的な食事を与えたいと考える飼い主が多いと思います。

簡潔にまとめました。種子によっても違いはあるので、気になる方はご自身でもお調べください。

用意するもの

1、容器(Jar/ジャー)
2、水切り(Strainer/ストレーナー)
3、GSE(Grapefruit Seed Extract)
4、Soak Seedsまたはミックスナッツ

ペゴが使用している物を紹介(動画内で使用したもの)
Jar(容器):Ball® Mason Jars & Lids, Wide Mouth 16oz
容器はBPAフリーなど無害のものを使用してください。
ストレーナー:ステンレスメッシュ
※上記画像のように食品用メッシュ布などでも可能です。容器の中の水を捨てる時に使うザルの用途になります。
GSE:NutriBiotic
無くても構いませんが使った方が安心です。
日本でそろえる場合は容器の紹介はコチラ作り方と与え方はコチラを参考にしてください。

BPAとは、プラスチックに使われる化学物質のこと。微量が溶け出す可能性がありホルモンの働きを乱す恐れがあるのでBPA不使用の容器を強く推奨。

GSEとは、グレープフルーツ種子エキス)の略で、強い抗菌・抗真菌作用 があることで知られます。

Soak Seedsの作り方

繁體中文字幕目前正在準備中。

1、Soak Seedsを給餌する1回分の量を容器に入れる。
2、水道水(流水で)シードを濯いで汚れを除去する。
3、数回ほど濯ぎ洗いを繰り返しシードが綺麗になったら水を切る。
4、シードの3倍以上の綺麗な水を容器に入れる。
5、GSEを数滴たらす(0.05%程度)
6、常温または冷蔵庫で6~8時間放置=Soak
※Sproutを前提としたSoakは冷蔵庫不可
7、時間になったら汚れた水を捨てます。
8、水道水の流水で勢いよくシードをすすぎます。
9、水を捨てて再度、流水でよくすすぎます(これを2~3回ほど繰り返す)
10、シードが綺麗になったら水を捨てる。
11、鳥に与える。

作り始めてから8時間程度で給餌することができます。
シードによってSoak時間は異なりますが、8時間必要なシードを3時間だけのSoakで給餌することも可能です。元々は乾燥状態でも食べられるシードなので害は全くありません。ただ、Soakするメリットを最大限、得るためには適切なSoak時間でお作りください。

各シードのSoak時間一覧表はコチラで無料配布中です。

与える際は、濡れたものが苦手な鳥はキッチンペーパーなどで水分を取ってから与えることも可能です。お好みで与えてください。

※Soak中は常温推奨ですが冷蔵庫でも可能です。

Soak Nutsの作り方

繁體中文字幕目前正在準備中。

1、1回分のミックスナッツを容器に入れる。
→動画はアーモンドとクルミを使用
2、水道水(流水で)ナッツを濯いで汚れを除去する。
3、数回ほど濯ぎ洗いを繰り返しナッツが綺麗になったら水を切る。
4、ナッツの3倍以上の綺麗な水を容器に入れる。
5、GSEを数滴たらす(0.05%程度)
6、冷蔵庫で6~8時間放置=Soak
7、8時間後、汚れた水を捨てます。
※汚れや脂質、酵素阻害物質(フィチン酸など)が溶け出したため濁っています。この水は飲めないので捨ててください。
8、水道水の流水で勢いよくナッツをすすぎます。(これを2~3回ほど繰り返す)
9、ナッツが綺麗になったら鳥に与えてください。

与える際は、水を切った状態でも可能ですが濡れたものが苦手な鳥はキッチンペーパーなどで水分を取ってから与えることも可能です。お好みで与えてください。 

※Soak Seedsとの違いはSoak中は冷蔵庫に入れることです。

鳥種/給餌量

鳥種
フィンチ~大型インコまで与えることが可能です。
ローリー/ロリキートは不可

乾燥状態よりもSoakさせて与えることで消化が良くなり、栄養の吸収も良くなります、胃の弱い鳥や硬い物が食べにくい鳥などにもオススメです。

給餌量
全体の給餌量の10~15%を推奨です。
毎日、与えることが可能です。好きなタイミングで構いませんが、朝ごはんで与えることを推奨します。

インコ・オウムのホールフード食事割合表。新鮮な野菜30〜40%、発芽食品(種子・豆類・マイクログリーン)10〜20%、Soak seeds(浸水シード)10〜15%、乾燥シード10〜15%、新鮮フルーツ10〜15%のバランスで構成した給餌ガイド。小型・中型・大型インコの適切な給餌量の目安も掲載。健康維持のための自然食・ホールフード栄養ガイドラインを示す図表。

給餌時間

給餌は10~12時間程度で処分してください。
朝に与えて夕方に交換する時間帯で問題ありません。
よく「SoakやSproutは2時間以内に処分しないと菌が繁殖して危険」と言われますが、健康に影響が出るような菌は半日程度では心配いりません。また、水分を含んだシードは生きているので、給餌容器に移した瞬間に発芽の成長が止まり、数時間で危険な植物になることもありません。

心配でしたら6~8時間程度で処分していただけたらと思いますが、無菌状態で飼育しているわけではないのであれば、心配しすぎなくても大丈夫です。
SoakやSprout、マイクログリーンでよく聞くのが「小さなデメリットに恐れて、大きなメリットを逃す」という言葉があるらしいです。

日本の気候について

多いお問い合わせの一つに「日本は高温多湿なので発芽は不安」と言われます。確かに、日本の気候は適切とは言えませんが、心配するほどではありません。参考に、東京とフロリダ州の2025年の平均を紹介します。ほとんど大差ありません。
アメリカではフロリダでのSoak/Sprout/マイクログリーンの栽培を心配する声はほとんどありません。

上記は代表値・目安なので「実際の東京はもっと高温多湿」と思う方もいるかもしれませんが、それはフロリダも同様です。フロリダでは一年中、Soak/Sprout/マイクログリーンの栽培をしている人が大勢います。

室内栽培+冷房管理(室温28℃以下)されている愛鳥が過ごしやすい空間であれば、栽培には全く問題ありません。屋外栽培は不可。
室内の温度が常に30℃以上/湿度が70%を越える場合は、栽培だけではなく愛鳥の飼育環境にも適していないので、除湿や通気(扇風機)をして調整してください。
室温や湿度と同じくらい、空気の循環がきちんとされているか場所であること、清潔な容器で正しく作ることが重要です。
夏は危険だから秋冬だけ...という意見も多いですが、愛鳥の健康のため是非、一年中与えていただけたらと思います。

保管方法

冷蔵庫で保管
保管する分を容器に入れ、GSEを数滴たらして10分間常温で放置し、種子にGSEを浸透させたら水で洗い流さずにGSEが付着した状態で、しっかり水を切ってから密閉容器に入れて冷蔵庫保管。与える時は直前にしっかり水ですすいで清潔な状態で給餌してください。
保管期間は一週間程度は問題ないと言われていますがペゴの経験上、冷蔵保管してから3日以内の使い切りがおすすめです。

冷凍庫保管
しっかり水を切ってから密閉容器に入れて冷蔵庫保管。
給餌前に洗う必要はありません。電子レンジなど加熱して解凍することは推奨しません。
保管期間は3~4週間程度は問題ないと言われていますが、冷凍したことがないので種子の状態を見てご判断はお任せします。可能な限り早めに使い切ってください。

よくある質問

・ヌメりが出る
ヌメりを感じてすぐに廃棄する方が多いですが、必ずしもヌメり=腐敗ではありません。種子によっては水分を含むとヌメりが出る性質のものもあります。分かりやすい例ですと、チアシードは水分を含むとゼリー状になりヌメりが出ますし、オクラも切ると断面がヌルヌルします。
多糖類の種子は特にヌメりが出ることは自然な現象なので、腐敗しているヌメりか種子の性質なのか見極めていただきたいと思います。

・腐敗しているかの判断方法を教えて
適切なSoak時間と状態に問題のない種子であれば、数時間~半日のSoakだけでシードやナッツが腐敗することはありません。(当店のSoak Seedsミックスナッツの場合)過剰なSoak(24時間以上など)をした場合は腐敗の可能性はあるので、Soak時間にご注意ください。

・なぜ発芽専用種子がオススメなの?
普通の種子と発芽専用種子の大きな違いは、一般的な食中毒病原体(サルモネラ菌、大腸菌、リステリア菌)の検査をクリアしているか、発芽能力が確認されているかです。そのまま乾燥状態で与えるなら構いませんが(できれば検査クリアしている種子の給餌がベスト)、水分を含ませて種子を目覚めさせるので検査をクリアした種子が安全です。詳細はコチラのページに記載しています。

・光は必要ないって本当?
Soakに光は不要です。光が必要になるのは葉が生えてからになります。それはSoakではなくマイクログリーン栽培になります。
Soakに必要な数時間であれば真っ暗闇でも部屋の光だけでも、どちらでも大丈夫です。

・1種類だけ又は複数種類を混ぜても良い?
問題ありません。栄養面で考えると複数種類で作ることをオススメします。

・Soakは鳥に不適切だと言われた
そのような情報もあるでしょう。どんな物にも長所と短所が存在します。誰に不適切と言われたのか、そしてその理由を深掘りしてご自身で納得できる判断をお願いします。

例えば...
・Soakは衛生面で危険
→世界中にSoak食品は存在して家庭栽培している人は大勢います。Sprout用の種子や用品も多数販売されています。
ただ水分を含んだだけの種子がなぜ急に危険になるのか確認してください。水を飲んだクチバシでシードを食べる鳥もいるでしょう。その場合、餌容器の中のシードは濡れてしまいますが危険ではありません。色んな意見があるので、情報収集をして問題なさそうなら採用し、無理だと判断したら使用しないでください。

・栄養面でSoakよりサプリメントやペレットのほうが良いから必要ない
→開封して数か月経過したペレットに、実際どれくらいの栄養価が含まれているか。未開封でもペレットの栄養成分は減少していくという研究結果があります。Soak食品のメリットを調べて比較してみてください。それでSoak食品が不要だと感じたのであればご判断はお任せします。

・獣医師から与えないように言われた
理由をしっかり聞いて判断してください。疾患を患っていても、特殊なケースを除き、多くの場合はSoak食品は安全に与えられる健康的なフードです。実際に野生の鳥が食べているものに非常に近いので加工食品よりも体に負担がなく栄養価も高いです。

 

冒頭で紹介している【なぜSoakがオススメなの?】で紹介している通り、与えるメリットのほうが遥かに大きな健康食材ですので、与えないのは非常に勿体ないです。是非、少しずつでも与えてみてください。

ただし、既にSoakした状態で販売されているものは決して鳥には与えないでください。コチラの鳥類生物学者のセミナーでも解説がありますが、これらはサルモネラ菌や大腸菌などの細菌問題でアメリカでは頻繁にリコールされていることが問題となっています。詳細はセミナーをご確認ください。

注意事項

容器を清潔にして作ってください。
ペゴスタッフが冒頭で紹介したJarは、使用前は煮沸消毒して清潔に使用しています。

GSEは使用しなくても大丈夫ですが使用したほうが、菌の増殖を抑えることができて腐敗しにくくなるので衛生面で使用することをおすすめします。使用量は数滴(0.05%程度)です。多いと傷みやすくなります。ペゴスタッフはBall® Mason Jars 16ozの容器の場合、2~3滴入れています。

このやり方が100%正解というわけではなく、各社が推奨する作り方を組み合わせたものを簡潔に紹介しました。

人それぞれ、使う容器も考え方も異なるので作り方は色々とあります。正しい/間違っているではなく、自分のやりやすい作り方で、適切にSoakして与えることが重要なので、まずは当ページを参考にしていただき、慣れてきたらご自身でオリジナルの作り方を見つけていただけたらと思います。

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